← → keys
← index
LT · 2026-04-21 · 8min

AIの出力を信じるな
ハルシネーションを設計で殺す方法

$ speaker: ishigaki naoki  /  topic: AIを設計の中に組み込む
「だいたい動く」を「業務で使える」に変えた話。
Step 1 · 症状の共有

みんな、同じ悩みを持ってないか?

  • 生成結果がたまに壊れる
  • レビューに時間がかかる
  • 結局、人間が全部チェックする羽目に
AIで作ると、だいたい動く。
でも "だいたい" じゃ業務に入れられない。

今日は、この「だいたい」を「100%」に変えた話をする。

Step 2 · アンチパターン

AIを使って「建築図面」をつくってみよう

既存の開発チームが採用していた機械学習も LLM も、
建築図面を画像としてそのまま扱う仕組みだった。でも——

✗ 建蔽率 60% は法律

AIは「だいたい 60%」しか出せない。0.1% オーバーで建築確認申請アウト。

✗ 画像だから微調整も検証もできない

「ちょっとだけ縮めて」ができない。面積も角度も、画像からは正確に測れない。

画像で扱う限り、正しさを検証できない。

これは「だいたい動くけど業務には使えない」の症例。

Step 2 · 問題のアーキテクチャ

何が起きているのか、図で見てみる

入力

画像
要件

処理

AI (機械学習 / LLM)
制御不能

検証できない ▶

出力

画像
間取り

微調整できない

入力も出力も画像。途中も制御不能。
直せないし、検証もできない。
Step 3 · 引いた目で見る

業務全体の流れは、どうなっている?

引いた目で観察する。

業務はぜんぶ座標で動いている。なのに AI の前後で画像化が挟まる。

CAD 図面

(座標管理)

画像化 ▶

入力

画像
要件

処理

AI (機械学習 / LLM)
制御不能

出力

画像
間取り

戻せず ▶

確認申請

(座標提出)

前後は座標、真ん中だけ画像
業務の流れが、AI の都合でぶつ切りになっている。
Step 3 · 答えは足元にあった

答えは座標データだった。

CAD で図面を引く。座標で管理する。最終的に座標で申請する。
入力も座標。出力も座標

じゃあ、途中も座標で扱えばいいじゃないか。

座標で扱うと決めた瞬間、操作も評価もできるようになった。

Step 3 · 発想の転換  //  核心

じゃあ AI 使わないのか?
いや、使う。ただし役割を分ける。

業務

CAD

input

(座標)

AI (LLM)

「創造」担当

生成 ▶

数学 (幾何)

「検証」担当

ダメ出しを受けて、やり直す

output

(座標)

業務

申請

※概念図です。複雑な仕組みがこれを取り囲んでいます。

生成は AI。検証は数学。
数学にハルシネーションはない。
Step 3 · ループの中身

品質基準を満たすまで、繰り返す。

AI建蔽率 60.3% の間取りを出す
数学「0.3% オーバー、アウト」と返す
AIやり直す
数学OK / NG で判定
AI
座標と面積の計算に「だいたい」はない。
Step 3 · 人間の仕事

この泥臭い棚卸しこそ、人間の仕事。

人間がやっていた作業を、1つ1つ「生成」と「検証」に置き換える。

Target(場所)

1F 間取り
2F 間取り
階段位置
屋根形状
窓・開口部
水回りゾーニング
外構 / 駐車場

生成

LLM
遺伝的アルゴリズム
厳密解(最適化)
ルールベース
テンプレート
ランダム探索 + 選抜

検証

建蔽率
容積率
斜線制限
日影規制
動線チェック
隣地境界
階段寸法 / 避難距離

無数にある人間の仕事を、1つ1つ棚卸しする泥臭さ
そして、棚卸ししても崩壊しない堅い設計
この2つが揃って、はじめて業務で使える。
Step 4 · 一歩引いて考える

なぜ浅い設計のまま、進んでしまうのか?

AI に「問い」を投げかけると、AI は「それっぽい解」を出す。
「それっぽい解」が間違っていたら、もの凄い速度で間違った方向に進むだけ

「解の確からしさ」を判断するのは、人間の役目
身体感覚に根ざした知性や、言語化されない知性を総動員しよう。

今回、自分がやったことは、シンプル。
一歩引いて、森を見た。一歩引いて「建築設計の業務を眺めた」。
たったそれだけで、既存の開発チームが陥っていた罠を回避できた。

「ちょっと、一歩引いてみよう」という直感も知性。これは人間の知性
人間の知性が、設計を深くする。
Next · 次回予告

ところで——

人間の知性といえば、……

実は、AI には原理的にできない思考がある。

次回:「AIにアハ体験は無理」

$ Thank you.  /  Questions?

2026-04-21 · naoki